世界の偉人筆跡カレンダー 1990年

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     近松門左衛門


       島崎藤村


       夏目漱石


       樋口一葉


       石川啄木


       森 鷗外


       松尾芭蕉


       井原西鶴


       北原白秋


      芥川龍之介


       永井荷風


       宮沢賢治

1990年 Calendar  





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1月 近松門左衛門 Monzaemon Chikamatsu

1653(承応2)~1724.11.22(享保9)
越前国、福井藩に生まれる。元禄文化を代表する浄瑠璃、歌舞伎作家。西鶴、芭蕉らと同時代に生きる。京都の公卿に仕え、主人の没後、作家生活に入り古浄瑠璃の台本「世継曾我」で認められる。叙事的な『景清』を史劇的に脱却させた「出世景清」はこれ以前の浄瑠璃を古浄瑠璃と呼ぶほど斬新であった。歌舞伎の台本を書いた経験を生かし、世話物を創始。「曾根崎心中」で空前の大当たりをとる。円熟期以後はたて続けに傑作の浄瑠璃を発表。人間の愛憎を描いた作品は、現代にも通ずる。

2月 島崎藤村 Toson Shimazaki

1872.2.17(明治5)~1943.8.22(昭和18)
明治から昭和前期に活躍した詩人。小説家。長野県に床屋の息子として生まれる。明治女学校、東北学院などで教師生活を送る。一方で、北村透谷らと”文学界”を創刊。透谷の自殺を転機に、芸術至上主義へと向かう。処女詩集「若菜集」は近代詩の記念碑といわれる。小説では「破戒」を発表。自然主義文学の先駆となった。不倫告白の「新生」では物議をかもす。父をモデルに日本の近代黎明を描いた大河小説、藤村文学の集大成「夜明け前」、6年に及ぶ連載を完成する。

3月 夏目漱石 Soseki Natsume

1967.1.5(慶応3)~1916.12.9(大正5)
明治の作家。東京、新宿に生まれる。
東京大学英文学科を卒業し、英語教師となる。各地で教鞭をとり、イギリス留学後は母校東大で教える。
正岡子規より俳句を学び、子規の門下高浜虚子の勧めで雑誌”ホトトギス”に小説を連載する。その中の「吾輩は猫である」「坊っちゃん」「草枕」で注目を集め、漱石三部作「三四郎」「それから」「門」、理念の文学「こころ」、実在の文学「道草」を発表。半生は病いとの闘いであった。「明暗」を未完に没する。

4月 樋口一葉 Ichyo Higuchi

1872.3.25(明治5)~1896.11.23
明治前期の女流小説家、歌人。下級官吏の娘として東京に生まれる。
上流家庭の子女が集まる中島歌子の歌塾萩の舎に入門。姉弟子、田辺花圃に刺激され小説家の道へ。早くからその才能が注目される。半井桃水に師事するが、二人の噂が問題となり決別する。その後”都の花””文学界”文芸倶楽部”などに作品を発表してゆく。代表作に「たけくらべ」「にごりえ」「十三夜」「わかれ道」などがある。時代の現実、女性の哀歓をありのままに描いた。借金と質屋通い、貧困のまま短い生涯を閉じる。

5月 石川啄木 Takuboku Ishikawa

1886.2.20(明治19)~1912.4.13(明治45)
明治の詩人、歌人、評論家。岩手県南岩手郡日戸村生まれ。
文学を志し、盛岡中学を中退し上京するが病気のため挫折する。故郷渋民村の代用教員、北海道の地方新聞記者などをした後、再上京。東京朝日新聞の校正係として働く。明治43年「一握の砂」を刊行。同年起こった大逆事件後は社会主義に傾き、事の真相究明にあたるが、まもなく病臥する。没後、「悲しき玩具」「呼子と口笛」が発表される。三行書きの生活に根ざした短歌は人々に愛唱され、”国民詩人”とうたわれる。

6月 森鷗外 Ogai Mori

1862.1.19(文久2)~1922.7.9(大正11)
明治から大正の小説家、評論家、翻訳家、戯曲家、軍医。石見国津和野に生まれる。
東京大学医学部を出て陸軍軍医となり、3年のドイツ留学で衛生学を修めると共に、芸術に傾倒。「舞姫」で文壇に登場した。評論では坪内逍遥との没理想論争で知られる。名訳にアンデルセンの「即興詩人」、ゲーテの「ファウスト」がある。自然主義に対抗する「ヰタ・セクスアリス」「青年」「雁」を発表。晩年は「阿部一族」をはじめとする歴史小説を手がけた。
「余ハ石見人森林太郎トシテ死セント欲ス」と遺言した。

7月 松尾芭蕉 Basho Matsuo

1644(正保元)~1694.10.12(元禄7)
江戸前期の俳人。伊賀国、上野に生まれる。
俳諧を嗜む藤堂新七郎良忠(号・蟬吟)に小姓として仕える。良忠の没後出奔し、京都、さらに江戸へ出る。
師、北村季吟から連俳を学び独立。「虚栗」において、さび・しおり・ほそみの正風俳諧を確立する。
生涯旅に出た。とりわけ母の死を境に観念の変化がみられ「奥の細道」をはじめ、数々の俳諧紀行の傑作を物す。俳諧を文学、芸術に昇華させた。辞世の句は「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」。

8月 井原西鶴 Saikaku Ihara

1642(寛永19)~1693.8.10(元禄6)
江戸前期の俳人、浮世草子作者。大阪に生まれ、家業は手代にゆずる。
貞門派の俳諧を学んだ後、西山宗因の談林派へ。その後、前衛的詩風から阿蘭陀西鶴と称される。師、宗因の没後は小説の世界に転じる。浮世の世相、風俗を描く浮世草子を創始。処女作であり代表作でもある「好色一代男」を著す。好色物「好色一代女」「好色五人女」、武家物「武道伝来記」、町人物「日本永代蔵」「世間胸算用」などを物す。
楽天的境地から晩年は諦念的境地となる。辞世の句は「浮世の月見過しにけり末二年」。

9月 北原白秋 Hakushu Kitahara

1885.1.25(明治18)~1942.11.2(昭和17)
明治から昭和前期の詩人、歌人。福岡県柳川に酒造業の長男として生まれる。
与謝野鉄幹の新詩社に参加、後に脱退。吉井勇、木下杢太郎、高村光太郎らとパンの会を設立する。陶酔的詩風をもった処女詩集「邪宗門」を発表。西欧感覚の歌集「桐の花」で歌人としても名を成す。しかし、人妻との恋愛事件で入獄、生家の破産で一時期苦境に陥る。自然や小さな存在への愛が作風に変化をもたらす。晩年は近代幽玄体をめざした「黒檜」「白南風」を刊行。童謡、民謡の分野にも新境地を開いた。

10月 芥川龍之介 Ryunosuke Akutagawa

1982.3.1(明治25)~1927.7.24(昭和2)
大正の小説家。東京、京橋に生まれる。
生来虚弱で、幼少から読書に親しむ。東大英文科在学中に菊池寛、久米正雄らと”新思潮”を創刊。処女作「老年」、代表作である「羅生門」や「鼻」を次々に発表する。「鼻」は夏目漱石に絶賛され、門下となる。
東大卒業後は英語教官を経て、大阪毎日新聞社に入り創作に専念。芸術至上主義を示す「戯作三昧」をはじめ、短篇の名作を旺盛に物す。晩年は人生や芸術に対して懐疑的な自己を作品に投影した。『ぼんやりとした不安』を理由に服毒自殺。

11月 永井荷風 Kafu Nagai

1879.12.3(明治12)~1959.4.30(昭和34)
小説家。東京、小石川に良家の長男として生まれるが、上流社会の形式的な秩序や偽善を嫌った。欧米での6年に及ぶ生活で、個人主義はますます強固となる。「あめりか物語」「ふらんす物語」で耽美派の流行作家に。”三田文学”を主宰し、随筆、戯曲を物した。昭和26年には、大正6年から書き続けた日記「断腸亭日乗」を発表。時局におもねなかった彼の一貫した姿が描かれている。2度の結婚、離婚を経験し、多くの芸妓、私娼と交際した。花柳小説「濹東綺譚」も名高い。

12月 宮沢賢治 Kenji Miyazawa

1896.8.27(明治29)~1933.9.21(昭和8)
大正から昭和の詩人、童話作家、農業技術者。
岩手県花巻の屈指の商家に生まれる。地元の貧困な農業、文化を改善しようと志す。盛岡高等農林学校に学び、技術、自然科学の知識を身につける。自ら耕作し、農業技術改良のため奔走。農学校教師として、農業はむろん音楽、文芸の教育も行う。詩人、作家としての彼は生前ほとんど知られることがなかった。「銀河鉄道の夜」「雨ニモマケズ」「風の又三郎」などが名高い。作品は文学世界にとどまらず、エコロジー(生態学)にも通ずる。独自の思想を情熱的に体現して生きた。